日本食が健康食として人気が出たり、日本製アニメや漫画、ゲームが海外で大人気で「OTAKU」という言葉がそのまま利用される等、海外における日本文化の知名度はここ数年で確実に上がってきたと言えます。

ハリウッドでも、近年は日本が題材の『ラスト・サムライ』('03)『ロスト・イン・トランスレーション』('03)『SAYURI』('05) 、『硫黄島からの手紙』('06)や『ザ・リング』('02) や『THE JUON/呪怨』('04)など日本ホラーのリメイク作品やその続編が大ヒット。
渡辺謙が立て続けにハリウッド大作に出演したり、2006年度アカデミー助演女優賞に菊地凛子がノミネートされる等、ハリウッドにおける「日本」に対する注目度は上がっています。

それでもハリウッド映画に登場する日本又は日本人の描写が「変」という事はたまにあります。マイナーなB級作品で忍者が登場するのはあまり驚きませんが、たまにメジャー作品でも見られることがあります。

例えば、『キル・ビル』('04) のような、元々荒唐無稽な内容で確信犯的に間違った日本描写で笑いを狙った作品はご愛嬌ですが、(作品自体は観ていないので詳細は判りませんが)東京が舞台の『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』('06)では和式便所の横に浴槽があるという日本式「ユニットバス」が登場したりします。

どうしてこういった誤った日本描写が生まれるのでしょうか?

①日本文化を誤解している
②故意に日本をねじ曲げて描写している
③そもそも「正しい」描写をすることに興味がない

のいずれが原因と想像できますが、実は①+③が多いのではないかと思います。

日本では英語や外国に触れる機会がたくさんありますが、米国では日本などの外国の文化に触れる機会はほとんどないのです。そもそも、一般的に米国(人)は自国以外の外国の出来事や文化にはあまり興味がなく、興味は自分達にどう影響があるかという範囲に限られる場合が多いのです。

例をいくつか挙げますと・・・

* 国際単位系である「メートル法」を米国は未だに使用していない数少ない国である(※注:米国も法律上はメートル法を公式の単位系としているが、一般にはヤード・ポンド法の方が広く使用されている)。
* ヨーロッパ諸国やアジア諸国で出版された英語以外の書籍が翻訳されて米国で発売されることは稀。
* 日本のアニメ番組等の例外はあるが、外国のTV番組がそのままの形(吹替え又は字幕付き)で米国で放送されることはほとんどない。多くの場合、外国の番組は米国用にアレンジされた「米国版」が放送される。

また、外国と比較して米国人は外国へ行くことが少なく、これはパスポートを所有する米国人が全体の20%以下であるという統計からもわかります。

そんな内弁慶な米国人が誤った日本描写のTV番組や映画で観てものをそのまま信じて、それが更に誤った日本描写を生んで・・・という悪循環なような気がします。

もっとも、これは何も米国人だけではないですけど。

日本人もハリウッド映画の世界がそのままその国だと勘違いすることは多いでしょうし、日本人同士でも、 TVや映画で描かれる「東京」をそのまま現実と勘違いする地方の方は結構いると思います(逆もまた然り)。

私も入社したての頃、大阪出身の会社の同期に「東京の人はみんな”~じゃん”って言うんだよね」と言われた経験があります。

まぁ、あまりに悪意に満ちた誤った描写などは考えものですが、個人的には、映画はあくまでエンターテインメントなので、日本の描写がどうであるかにそれ程目くじらを立てずに作品全体が面白いかどうかで評価すればいいと思います。
例えば、ヨーロッパやアメリカの作品を観る時、「描写が正しいか」なんて気にしないですよね?(そもそも何が「正しい」かが判らない場合が多いですが)

--------------------
"@ the Movies"
http://www.asahi-net.or.jp/~rn6d-hnd/